うさこちゃんに会いに行く

 県内某市まで出張。来週の予定だったのだけれど、先方の都合で今日になる。目的の市まではJRの特急電車を使えば1時間ほど。各駅停車で1時間30分あまりかかる。頻繁に特急が走っているわけではないので、普通電車で出かける。朝の下り電車はガラガラで、途中から一車両に乗っているのが5人くらいになる。単線なので、反対方向からやってくる列車を待つために、2、3駅に一駅の割合で数分ずつ停車する。車内では多和田葉子さんの『球形時間』を読む。すると突然、ジジジという音が聞こえてきたので顔を上げると、僕の座っていたボックス席の一つ前の席に座っていた女子高校生が立ち上がって、持っていたうちわでチャンバラのようなことをしている。ジジジの正体はなんと大きな蝉で、しばらくすると窓に止まった。他の席も空いているのだから、黙ってそちらに移ればいいのに、あろうことかその女子高校生は僕に対して、「蝉掴めますか?」と訊いてくる。参った。昆虫は子どもの頃から大の苦手だ。とはいえ、「無理!」というのもなんなので、ほとんどない勇気を振り絞り、蝉のほうへ。窓を開けて追い払おうと思ったのだけれど、この電車の窓は開かないようになっている(ツマミが撤去された跡があるので、昔は開いたのだろうに)。第一作戦失敗。高校生と「窓開かないんだね」「そーなんですよ」と確認しあって第二作戦に移行。蝉の後ろの羽根の部分をそーっとつかもうと指を伸ばす。僕の指が触れたか触れないかというところで、再びジジジと大きな音を立てて蝉は飛んでいった。向かい側のシートの下のほうに入り込んでいって、そのまま出てこなくなった。とりあえず一安心。それにしても、電車で蝉とは。駅に着いて歩いて目的地へ。用件を済ませ、今日は特に急いで戻る理由もないと自主的に判断して(不良だねえ)、駅前から市内循環のコミュニティバスに乗車して美術館へ。「ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」展を40分ほどかけて見る。時期が時期だけに子どもが多いかと思ったのだけれど、お客さんはゼロ。そのせいか、途中の展示室で、監視員というネームタグをつけた爺さんと婆さんが大声で旅行よもやま話をしていたのには閉口した。美術館で「監視員」だなんて、誰がそんな職名を考えるんだろう。頭悪すぎ。ミッフィーがたくさん並ぶんだから普段は子ども連れが多くてにぎやかだろうし、美術館だからしーんとした雰囲気を維持しなければならない、とも思わないけれど、職員が率先して(?)うるさくしてどうする。ボランティアだかなんだか知らないけれど。あなたたちには空気げんこつをお送りします。と、文句を言いましたが、この企画そのものは、大人でも十分楽しめた。ブルーナの作品が生まれる過程(とにかく「無駄」を省いていくのだ)が細かく解説されていて、とても興味深かった。彼の父親は出版社を経営していて、その関係上、彼は多くのペーパーバックのデザインを手がけているのだけれど、それらを見るのも実に楽しかった。ミュージアム・ショップでは当然、ミッフィーグッズの販売が行われている。Uにあげるつもりで目録とポストカード(日本未発売とのこと)を購入。会場の出口で、ミッフィーと写真を撮れるコーナーがあって、そこで撮った写真が切手になるという。頼もうかと思ったのだけれど、「変な人がいます」と警察に通報されるとさすがに困るのでやめておいた(もちろんウソです)。帰りもコミュニティバスに乗る。タクシーで行けば5分くらいの道のりを、循環という名が示すとおりずいぶんと回り道をしながら20分ほどかけて走る。車一台がようやく通れるくらいの狭い路地をバスは抜けていく。駅に到着し、バス停のすぐ正面に、「速くて、安い! デラックスバス」(デラックスバス、ってなんとなく陳腐ですね)という高速バスの広告を見かけたのだけれど、時間があわなかったのでまたJRに乗る。今朝は3時半起きだったので(そう思って起きたわけではなく、自然に目が覚めた)、帰りの車内ではiPodで音楽を聴きながら眠る。ところで、ミッフィー(miffy)とニフティnifty)って似てますよね。

ミッフィーどうしたの? (ミッフィーはじめてのえほん)

ミッフィーどうしたの? (ミッフィーはじめてのえほん)


今日の支出:美術館観覧料(700円)+図録(1,500円)+ポストカード2枚(316円)+コミュニティバス2回分(200円)