牛肉のカルパッチョ
昨日は夕方から出かける。まずは書店へ。森下典子さんの『いとしいたべもの』(世界文化社)を買うつもりだったのに、見つからず。この本、「わが人生のサッポロ一番みそラーメン」だの、「水羊羹のエロス」だの、「父と舟和の芋ようかん」だの、各章のタイトルを眺めているだけで楽しい気分になる。ナイトキャップ(死語だよ)に、と決めていただけに残念。おまけに、庄野潤三『自分の羽根:庄野潤三随筆集』(講談社文芸文庫)を買い忘れてしまった。
夜、仕事でこちらに来ていた後輩と食事。彼はお土産として、複数持っているという、内田百けんの『居候匆々』(福武文庫)を持ってきてくれた。筋金入りの「テツ(と最近はいうらしい。鉄道ファンのこと)」である彼に内田百けんの『阿房列車』を紹介したのはもう10年以上も前のことだ。あの当時、よい本を紹介してくれた、とずいぶん感謝されたのを思い出す。うれしい土産だ。ありがとう。イタリア料理店で夕食をともにする。最後に牛肉のカルパッチョが出た。二人揃って(!)生の肉がだめで、牛肉の上にトッピングされている野菜だけ食べる。とてもきれいないいお肉で、炙ったらおいしいのにねえ、と二人で言いながらフォークを置く。皿を下げにきたお店の方に、「二人とも生のお肉だめなんですよ、ごめんなさい」と謝ると、こちらこそ確認もせずにすみませんでした(いや、普通は確認しないでしょ)、と深々と謝罪されてかえって恐縮。コースのデザートはシャーベットだけだったのだけれど、お詫びということでティラミスもつけていただき、喜ぶ甘党男子二名。
後輩は東京まで夜行の急行電車で帰るという。入場券を買い、ホームで見送った。連休直後のせいなのか、あるいはいつもこんななのか、列車はガラガラ。発車していく電車の赤色のテールランプを見ているとなんともいえない淋しい気分になる。帰り道、ずっと以前に読んだ「やこうれっしゃ」という絵本のことを思い出す。
ナイトキャップは木山捷平。『鳴るは風鈴』(講談社文芸文庫)。
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