物語が紡がれるとき

人が「話す」ということは、なかなか一筋縄ではいかないのです。誘導尋問がいけないとかいった単純な話でもありません。人が誰かに何かを答えるという作業は、お互いの関係や、聞く内容と答える内容との相互作用などが全体として成り立っている作業です。単なるQ&Aではないのです。/単なるQ&Aではない、ということは、もちろん悪いことではありません。私たちにとって大事なことは、聞き取り調査とはそういうものだという自覚をもつことです。ですから、聞いた話は、どういう状況のもとでどんな感じで聞いた話か、そして、相手の「答え」、相手の「話」はどう解釈すればいいのか、に常に注意を払っておく必要があるということです(p.116)
(出典)宮内泰介(2004)『自分で調べる技術:市民のための調査入門』岩波アクティブ新書。