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こんなお仕置きは嫌だ

「こないだお姉ちゃんが『あたしのいいところを百個並べて歌にしてこい』って・・・・・」 (中略) 三日という期限内に姉への讃歌を作らなければならなかったため、昨夜風呂場で倒れて意識を回復してからはほとんど一睡もしていない。姉のいいところを百個…

旅とは

遠くへ行くばかりが旅ではないな。要するに日常的な行動領域から脱出して異質なものに触れるのが旅だ、遠近は問題ではない(p. 99) (出典)宮脇俊三(1991)『旅は自由席』新潮文庫。

旅の効用

何日も家(職場)に閉じこもり、原稿用紙(Mac)などに向かっていると、体調がおかしくなってくる。食欲不振をはじめ、さまざまな症状が現れる。便の状況など直腸ガンそっくりになる(尾籠な話でなんですが)。最近は左胸に圧迫感を覚えるようになった(そこ…

八重洲古書館

東京駅構内を歩くすべての人々がここにきても、みな何かしら自分の興味のある本を見つけられるのではないかしらん。違う目的、違ういき先、違うテンポの本が、違和感なく並んでいるところがいかにも東京駅らしい(p.63) (出典)角田光代・岡崎武志(2005)…

JR西日本・福知山線事故

しかし一般世間ではどうかすると誤った責任観念からいろいろの災難事故の真因が抹殺され、そのおかげで表面上の責任者は出ない代わりに、同じ原因による事故の犠牲者が跡を絶たないということが珍しくないようで、これは困ったことだと思われる。これでは犠…

ぐるりのこと

もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、様々なことを、一つ一つ丁寧に味わいたい。味わいながら、考えの蔓を伸ばしてゆきたい。例えば、共感する、ことが、言葉に拠らない多様性に開かれてゆく方法について。最終的にはどうしても言葉で総括し…

ヨーロッパ

ナンシー 今でも、っていえば小学校の高学年の時、社会科の教科書の「ヨーロッパ」っていう字が急におかしく見えたことがあって。「『ヨーロッパ』って!」みたいな。「ヨー」「ロッ」「パッ」とかいう気持ちになっちゃったんですよ。それ以来、私ずうっとヨ…

小津安二郎・宗方姉妹(むねかたきょうだい)より

「満里ちゃん、あたしそんなに古い? ねえ、あんたの新しいってこと、どういうこと? どういうことなの?」 「お姉さん、自分では古くないと思ってらっしゃるの?」 「だからあんたに聞いてるのよ」 「お姉さん、京都行ったってお庭見て歩いたりお寺回ったり…

小説のなかの料理

「手の込んだ料理をくだくだ描写するより、シンプルな食べ物をぽんと出したほうが記憶に残りやすいわけだ」 「シンプルというか、一定の味の食べ物ですよね、料理人の腕に左右されない。この味なら自分も知ってるし、登場人物の舌が感じている味を正確にイメ…

不在者投票

「そうだバッハさんがデートしたいって言ってたよ」 祥一はいつも大事な話をあとに回す。デザートじゃないんだから最初に言えと思うが、こういうことも私が企業で教育されたことなのかもしれない。 「やだよ。まじ?」 「うん、まじ。不在者投票でもご一緒し…

モノマネ

「凄腕斬りこみ隊長」と自負する堀内が、部屋に入るなりリモコンを手にとり番号を入力していく。すぐにアップテンポの福山雅治の曲が部屋を膨れ上がらせて、俺の耳は正常な感覚を失っていった。誰かが明かりを落とすとスポットライトを浴びて堀内が浮かび上…

宝籤

「君がおやじに決められたお婿さんに、どんな感情を持てるのか、僕には想像もつかないんだよ」 「人の買ってくれた宝籤だって当ることがあるわ。好きになるには無責任なほどよくってよ」(p.184) (出典)三島由紀夫『鏡子の家』新潮文庫。

鍋焼きうどん

以下は味覚人飛行物体流鍋焼きうどんのつくり方である。なんら難しくはない。鍋にダシ汁を入れ、適宜の調味料(酒、みりん、醤油など)を加えて味をととのえ、そこにゆで上げておいたうどんを入れ、その上から生卵一個を割り落とし、さらに殻付きエビを三匹…

絶滅系

「あんたこそ何してはるの?」 「俺か、俺は大したことしてないぞ。大体、神というものは何もしないものだ」 「神さん?」 河野が聞き返すとファンタジーは憮然とした面持ちで言った。 「親戚のようなものだ。中でも俺様は一番できが悪い」 「ありがたいけど…

けつ喰らえ

「ばばちいタクシーね」 「乗りなさい」とガブリエル。「気ざはよしな」 「気ざだって、けつ喰らえ」ザジがやり返す(p.11) (出典)クノー、レーモン『地下鉄のザジ』(生田耕作訳)中公文庫。

小説のなかの固有名詞

(吉田さん)梶井基次郎の『檸檬』って小説がありますよね。あれには丸善が出てきます。そして、丸善という店をさらっと丸善としてしか書いてない。あれこそぼくがやりたい固有名詞の使い方です。その当時の丸善を知らないのに、作家が描きたかった丸善のイ…

春爛漫---きれいな言葉だ。みんなが共通した情景を思い浮かべられる、便利な言葉だ。これを使えば春はすべて表現できる。すぐ次の場面へ移ることができる。・・・・・・という具合に、落とし穴に落ちる。ここでぐっと我慢して、自分だけの言葉を絞り出してゆ…

China Syndrome

チャイナシンドローム。(原子炉の)破局的事故《米国で溶融した炉心が地球の反対側の中国まで達するほど大きな被害を与えるという意》。(ジーニアス英和大辞典) チャイナシンドローム。仮想し得る最悪の原子炉事故;米国の原子力発電所で炉心溶融(meltdo…

旅ノート

一週間以上の旅に出るときに、わたしは「旅ノート」というものをつくる。B5版の横罫のノートを一冊。表紙からと、裏からと、両方から書きこむ。裏の方には、金銭の出納を記入。表からの頁には、旅先で見たものをどんどん記入してゆく。 (出典)川上弘美「5…

一皮むける

「クラシックは学ばなければならないことが多い。でも、どこかで自分のスタイルに移行しなければならない。20歳からの数年間は、その移行期間でした」 「(演奏家にとって必要なのは)楽譜からどれだけ多くのものを読み取れるかどうか。その曲が生まれた国に…

おなかすいた

遅い昼御飯を近くの食堂で食べた。家族づれ。夫婦づれ。二人づれ。正月用の買い物袋を一人が三個ぐらいずつ足元の床に置いて、食堂は満席。しばらく待つ間、陳列棚に並べてある模食(蝋細工の見本料理)----- 『五目セット』(五目御飯+清し汁+ところ天+…

baker's dozen

baker's dozen (『ランダムハウス英語辞典』より) 【1】a baker's dozen 13個組、パン屋の1ダース; a baker's dozen of eggs 卵13個 【2】少しの[わずかな]数。昔、量目不足の罰を恐れて、パン屋などが1ダースにつき13個を渡した習慣から、出版社が13冊…

そのくらいすばらしいのです

After plunking down $400 for an iPod I almost wouldn't have cared about the product after having unwrapped the packaging, it was that nice. [The iPod is Apple Computer's music player.] (p.214) (Source) Donald A. Norman "Emotional Design" …

Catch-22

米国の小説家Joseph Hellerの同名の小説(1961)の軍規から。狂気なら戦闘を免除されるが、狂気という届けを出すと正気を判定されるから、どのみち戦闘参加となる(ランダムハウス英語辞典) どっちに転んでも勝算のない不合理な状況、板ばさみ;板ばさみを…

オフィスでの会話

There are two ideal ways to wind up a light conversation with a coworker; one is with a little near-joke, and the other is with the exchange of a piece of useful information. The first is more common, but the second is preferable. (p.34) (…

翻訳をめぐる冒険

翻訳とは、少々品の悪い表現を許していただければ、「他人の褌で相撲を取る」仕事です。創意は許されますが、創作は許されません(p.82) (出典)河野一郎(1999)『翻訳のおきて』DHC。 ISBN:4887241461 別にどうってこと言ってない文章に見えますけど、す…

痛いほどよくわかる

私は子供の時分から、医者の診察を受けている場合にきっと笑いたくなるという妙な癖がある。この癖は大きくなってもなかなか直らなくて、今でもその痕跡だけはまだ残っている。・・・(中略)・・・かかりつけの医者に診てもらう場合には、それほど困らなか…

「・・・(略)・・・実を言うとね、ぼくは店でレコードを買ったことが一度もないんだ。たぶんそれで、きみが言ったみたいなフェイドアウトの良さを知らずに終わってしまったのかもしれない。ラジオだと、曲と曲とが切れ目なくつながっていくからね。でも、…

白鳥は哀しからずや 空の青 海のあをにも染まずにたゞよう (若山牧水) いやふっと冒頭部分を思い出したんですけどね。後半をちゃんと覚えてなかったので調べてメモ。

「これから何をする?」 鼠はタオルで足を拭きながらしばらく考えた。 「小説を書こうと思うんだ。どう思う。」 「もちろん書けばいいさ。」 鼠は肯いた。 「どんな小説?」 「良い小説さ。自分にとってね。俺はね、自分に才能があるなんて思っちゃいないよ…