「これから何をする?」
鼠はタオルで足を拭きながらしばらく考えた。
「小説を書こうと思うんだ。どう思う。」
「もちろん書けばいいさ。」
鼠は肯いた。
「どんな小説?」
「良い小説さ。自分にとってね。俺はね、自分に才能があるなんて思っちゃいないよ。しかし少くとも、書くたびに自分自身が啓発されていくようなものじゃなくちゃ意味がないと思うんだ。そうだろ?」(p.117)
(出典)村上春樹(2004)『風の歌を聴け講談社文庫。(旧文庫版だとpp.113〜114)