JR西日本・福知山線事故

しかし一般世間ではどうかすると誤った責任観念からいろいろの災難事故の真因が抹殺され、そのおかげで表面上の責任者は出ない代わりに、同じ原因による事故の犠牲者が跡を絶たないということが珍しくないようで、これは困ったことだと思われる。これでは犠牲者は全く浮かばれない。
(出典)『寺田寅彦随筆集第5巻』(岩波文庫)。柳田邦男(1971)『マッハの恐怖』フジ出版社、p.387より孫引き。

明日は休みなので、今日はてっきり金曜日だと思っていた。早々と夕食を済ませて、読書。柳田邦男さんの『マッハの恐怖』を読み返す。この本が扱っているのは、昭和41年(1966年)に国内で立て続けに起きた3件の航空事故。著者の言葉を借りれば、昭和41年の日本の空はまさに「狂ったような事態」だった。全日空機羽田沖墜落事故、カナダ太平洋航空機羽田墜落事故、そしてカナダ機の翌日に起きた英国航空(BOAC)機の事故。これら3件の事故の原因に事実の積み上げ(簡単なようで難しい)から迫った本。この本を読むと、いかに本質的な原因追及が難しいかがよくわかる。政治的な介入や企業側の理屈によって、事故原因が彼らの意に沿う形で構成されてしまうこともありうる、ということ。いま読んでも新しい。