旭川のホテルは満室

 午後、半分起きて半分寝たまま映画を観ていたら(ちなみに、観ていたのは「気まぐれな唇」という韓国映画)、電話がかかってくる。父からだったので珍しいなーと思って出てみた。そしたら、これまた珍しく、慌てた口調で「頼みがある」という。もしかして、新手の振り込め詐欺か、とは思わなかったけれども、頼みの内容とは、旭川市内のホテルを至急調べて予約してくれないか、ということ。それは構わないけど、事情が飲み込めない、というようなことを言うと、こういうことらしい。四コママンガ風に説明すると(本谷有希子のパクリです)、一番上のコマには、羽田空港で熟年夫婦3組が稚内行きの飛行機に乗り込むところ、その次のコマには、3組6人が機内で談笑しながらコーヒーを飲んでいるところ、そして3つめのコマにはCAさんが「稚内空港濃霧のため、着陸できない場合は新千歳空港旭川空港に向かうかもしれません」と言っている様子、そして最後のコマには3組6人の熟年カップルが新千歳空港で思案にくれているところ、こうなります。んで、急遽陸路で移動することになったけれども、今日は旭川泊まりにする。それでホテルの予約が必要になった、というわけ。まずは以前泊まったことのあるパレスホテルに電話。満室です、とにべもない。そのほか、市内のシティホテル8軒に電話をかけたものの(自分の携帯電話の発信記録に、0166から始まる番号がずらっと並んでいる様子はなかなか壮観だった)、すべて満室。簡単にとれると思っていただけに(一つの宿に6人全員は無理だとしても)、ここまでとは! 夏休み初日の連休だから、時期が悪い。その旨父に連絡すると、向こうも驚いた様子。そりゃそうだよねえ。結論を言うと、この熟年カップル6人は旭川近郊の旅館の大広間に泊めてもらうことができたそうな。相部屋で。人生いろいろである。
 今日は朝4時半に起きて8時半の飛行機で上京するのだけれど、いまから寝るとちゃんと起きることができるかどうか不安。ゆっくり本でも読んで早く寝るつもりだったのに、夕方になって焼肉のお誘いがあって出かけて、食べすぎて胃がもたれているのでどうも眠れない。今日買ってきた『鉄道愛』というアンソロジーをちらちら読みながら、照明を消そうかどうしようか迷っている。この『鉄道愛』という本、鉄道に関するエッセイを集めたもの。内田百けん国木田独歩永井荷風などの作品が載っている。鉄道ファンにはいろいろある、というのは故・宮脇俊三センセイの言葉だったと思うけれど、模型ファン、写真ファン、レアグッズコレクターとか。それとはやや趣の違うファンというのが存在して、確か酒井順子さんが自分はこれだと言ってたと思うのだけれど、鉄道オタク(嫌な意味じゃなくて)が書いたエッセイを愛するというファンがいる。僕もそのひとりだと思うけれど、要するに、電車そのものや模型にはまったく興味がないけれど(僕は、もし羽田→名古屋/仙台に航空便があれば、新幹線は使わないくらいの長距離電車嫌い)、百鬼園センセイの阿房列車宮脇俊三さんの一連の著作を読むのが大好き、という輩のことです。用もないのに大阪に行ったり(しかも一等で)、国鉄の線路にすべて乗ろうと努力したり、そういう人たちの話はとっても面白いのです。

鉄道愛 日本篇

鉄道愛 日本篇