直島その2::まだ途中

 今回鑑賞した、家プロジェクトと地中美術館の感想を書こうかと思ったのだけれど、これから直島へ行こう、と考えているひとが、角屋にはこんな作品がある、あるいは南寺ではこういう手順で作品を見る(係の方が説明・誘導してくれる)、ということを事前に知っていると、まちがいなくつまらなくなると思う。だから、アートそのものへの感想は、鳥肌がたった、という6文字で済ませて、他の点についていくつか書いておきたいと思う。
 宇野港で直島ゆきの乗船券を買う。僕が宇野港に着いたのは11時半頃。この時間に直島方面へは、11:55に本村ゆき、12:15に宮ノ浦ゆきが出る。乗船券売り場の係員は、地中美術館に行くひとは12:15の宮ノ浦ゆきに乗ってください、11:55の本村ゆきにはバスが接続していません、と案内していたけれど、これは間違いで、本村ゆきの船で行くと、本村港から地中美術館ゆきの一本早いバスに乗れる。このへんの案内はちゃんとして欲しいと思う。んで、僕は本村ゆきに乗る。乗船券売り場にいたひとはほとんどが後続のフェリーを選んだ様子(そりゃああいう案内をすればねえ)。客は僕を入れて6人。釣り道具を持った男の子とお父さん、地元の方らしいおばあさん、大学生くらいのカップルひと組。20分ほどで本村着。まずは本村ラウンジ&アーカイブへ。家プロジェクトの鑑賞チケットを買う。角屋、護王神社石室(護王神社だけならいつでも無料で鑑賞可能)、南寺の共通チケットで500円。それぞれの場所でチケットのチェックが行われ、改札印が押されるようになっている。僕は角屋→護王神社(ベンチに座ってしばらく休憩したあと、石室を見学)→南寺という順で回った。路地を歩いていると、地元の方から「こんにちは」と声をかけられた。ちょっとしたことだけれど、嬉しい。あと、直島では公共のトイレがあまりないそうで、トイレボランティアというのがある。歩いていると、家の表札の横に、「トイレ貸します」という札がかかっている。お借りすることはなかったけれど、微笑ましい。何か問題が起きて、この取り組みがなくなる、なんてことにはなって欲しくないなあと思う。また本村ラウンジ&アーカイブに戻ってきて、地中美術館ゆきのバスを待つ。本村ラウンジ&アーカイブにはトイレがあり、デザインやアート関連の本がいくつも置いてあり、ソファに座って休憩しながら読むことができるようになっている。サントリー烏龍茶を一本買う。「250円なんですが」と係の女性が申し訳なさそうに言う。ここにはショップも併設されていて、家プロジェクト、「イエ」のロゴが入ったトートバッグ、Tシャツ、折りたたみ傘、メモブロック、サンダル、それから書籍、ポストカード、文房具(ロディアのノートもあった)などが売られている。「イエ」ロゴ入りのTシャツを部屋着用に買おうかとだいぶん心を動かされたのだけれど、やめておいた。しばらく休憩して、農協前(本村ラウンジ&アーカイブ隣接)から町営バスに乗る。席はすべて埋まっていて、つり革につかまって終点の地中美術館に向かう。途中、車窓から草間彌生の「南瓜」を眺める。地中美術館ゆきのバスは、地中美術館のチケットセンター前の駐車場に着く(帰りのバスもここから)。バスを降りると、チケットセンター内の椅子に座って、簡単な説明がある。携帯電話禁止、写真撮影禁止、アートには触れない、といった、基本的なマナーについて。以前は同意のサインを求めていたそうだけれど、それはなくなったらしい。説明後、チケット購入。連休だったので、混んでいるかも、と思っていたのだけれど、待ち時間なしですんなり入れた。チケット売り場にポストカードや図録の販売もあり。ただし、美術館内の地中ショップのほうが品揃えは充実している。センター内にはコインロッカーもあり、大きな荷物は作品保護の観点からも預けるように求められる。預けるときに100円が必要。ただし、あとで返却される。チケットセンターを出て、坂を登っていくと改札がある。チケットを提示し、また坂を登ると入口。モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの順に観る。モネとタレルの作品を観るときには、靴を脱がなくてはならないので、破れた靴下をはいていると思わず笑われることになるかも(貧乏くさくてすみません)。ひととおり観た後、地中カフェでバナナアイスクリームを食べ、コーヒーを飲む。んで、もう一回ずつ観た。2,000円。アートで元をとる、というのも変な話だけれど、とりすぎるくらいとっちゃったごめんなさい、というのが率直な感想。その後、館内の地中ショップへ。ポストカード、図録、関連書籍、Tシャツ、オリジナル香水、トートバッグ、オリジナルブレンドティーバッグなどが並ぶ。どれも価格は高め。『地中ハンドブック』(1,000円)とポストカード2枚(300円)を買って外に出る。バスに乗って発車を待っていると、もう一台バスが来て、宮ノ浦港へ行かれる方はこちらの直通のバスに乗ってくれ、とのことだった。宮ノ浦港に着いて、乗船券を買い、高松ゆきのフェリーを待つ。朝、コンビニのおにぎりを食べてから、地中カフェでアイスクリームを食べたくらいだったのでおなかぺこぺこ。港の周辺にはたこ焼きやラーメンを出す店がいくつかある。けれど、海の向こうには讃岐うどんが待っているのだから、と、香ばしいソースの匂いと必死に戦う。17時発のフェリー「あさひ」に乗り、横に長いベンチ式の座席につく。後から、僕の前の席に高校生くらいの女の子が来て、さっと靴を脱いで横になった。うわー、慣れてる、これがフェリーの乗り方かとすっかり感心して、トイレに行くついでに船内を見回すと、ちゃんと座っているのはいかにも旅行客という感じのひとで、地元らしいひとは靴を脱いで足を伸ばしていたり寝ていたり。僕はさすがに横にはならなかったけれど、iPod古今亭志ん朝師匠の「佃島」を聴いているうちにうとうとしてしまった。この船がひっくり返ったら困るな、と思いつつ。心地よい揺れ。40分ほどで、船の進行方向に高松の灯りが見えてくる。誰もいないデッキに出て、しばし石原裕次郎(?)。入港するまでに時間がかかり、到着は定刻通りの18時。徒歩で全日空ホテルクレメント高松。荷物を置いて、散歩に出る。目についたうどん屋に入り、肉うどん(500円)を食す。甘辛く煮た牛肉、わかめ、小口ねぎに甘めのだし。唐辛子をたっぷりかけて食べた。
 カフェまるや、山本うどん店、ベネッセハウスは次の訪問時にということで。