高松→松山、道後温泉:10月11日

 10月10日の夜に高松入り。高松に来るのはこれで二度目。前回の訪問からすでに10年以上経っている。そのときは、駅前がのんびりした感じだったのだけれど、今回訪問してびっくり。駅前には全日空ホテル、そして30階建ての高松シンボルタワーが建っている。また、北浜alleyという、倉庫を改装したカフェやインテリアショップ、バーなどが並ぶエリアもあるらしい。時間がなくて行かなかったけど。
 10月11日。朝から雨。手持ちの朝食クーポンは洋食ブッフェと和食のセットメニューから選択できる。迷わず和食へ。ホテルの2階にある、港が見渡せる和食レストランで食べる。8時頃、Aさんがホテルまで迎えに来てくださる。Aさんの車で目的地へ行き、お昼前まで仕事。用意していただいたお弁当を食べ、またAさんに駅まで送っていただく。電車の発車時刻までしばらくあったので、駅前の宮脇書店へ。「本なら何でも揃う」と大きく書いてあるのだけれど、読みたい本がない。嘘つき(この台詞、緒川たまきに言ってもらいたい)。迷っているうちに出発時刻の15分前になったので、松嶋菜々子の表紙のanan(特集・いまめざすのは「上質な女」)を買う。すごいタイトルだな、と思いつつ。高松駅のホームはフォークみたいになっている。フォークみたいというか、ATMというか、上野駅東北線高崎線ホームというか。要するに、終着駅。こういう感じがとてもいい。構内には讃岐うどんの店があって、まだお腹に入りそうだったけれどやめて、kioskを物色。「今日は休刊日」というプレートが出ているのを見て、今朝部屋に新聞が届いていなかった理由を知る。休刊日だけれど、愛媛新聞の朝刊があるのを見つけ、買う。ガラガラの自由席に座る。さきほどのAさんが教えてくれたところによると、地元の人は、高松→松山間でJRの特急を使うことはあまりないという。というのも、高松→松山間はJRの特急利用で2時間半。乗車券と自由席特急券で5,500円也。一方、坊っちゃんエクスプレス号という高速バスを利用すれば、所要時間は同じ2時間半で、運賃も1,500円ほど安いとのこと。しかも、高速バスは高松・松山市内のバス停にも寄るので、お盆や年末年始のような混雑期をのぞけば、こちらのほうがはるかに利便性がいいということだった。なるほどね。んで、高松から特急いしづちに乗る。進行方向右側の席に座れば瀬戸内海が見えるかも、と期待したとおり、時折眺めることができた。丸亀、新居浜今治と聞いたことのある地名の駅を進む。んで、松山に到着する15分くらい前、車掌が僕の方を見て何か言っている。iPodのイヤホンをER-6iにしてからというもの、うるさい車内でも快適に音楽を聴くことができる(音漏れもしないし)のだけれど、音楽が流れている状況では周りの音はほとんど入ってこないので、反応するまでに時間がかかってしまった。慌ててイヤホンを外すと、「自由席特急券を」という。なんだよ、高松だったか丸亀を発車した後に車内改札に来たじゃねえか、と思いつつ提示すると、そのまま持って行ってしまった。思わず、「持ってくの?」と車掌さんに対してぞんざいに言ってしまった。隣に座っていた初老の女性が教えてくれたところによると、到着前に特急券を車掌が回収するらしく、その旨の車内放送があったらしい。それにしたって、まだ着いてないのに、切符を回収していくというのは面白くない。
 松山には15時すぎに着く。駅内の観光案内所で伊予鉄の電車線の一日乗車券を買う。松山市内の路面電車は一乗車150円。一日乗車券は300円だから、すぐに元が取れてしまう(山手線内のフリーきっぷって700円くらいしませんでしたっけ?)。駅前の電車のりばから市駅ゆきの電車に乗り、終点の松山市駅まで。高島屋の裏の正宗寺内にある子規堂を見学。正岡子規の生家を復元したもの。正岡子規の勉強部屋や遺品を見る。また、子規堂の前には「坊っちゃん列車」も展示されていた。あとで実際に走っている坊っちゃん列車を見ることになるのだけれど、確かにマッチ箱のような列車。市駅まで戻り、道後温泉ゆきの電車に乗る。大街道(おおかいどう)で下車。いったんホテルにチェックインして、また大街道の駅から道後温泉ゆきの電車に乗る。10分ちょっとで道後温泉駅に着き、本館を目指す。道後温泉駅から道後温泉本館へは、土産物店や喫茶店が軒をつらねる商店街を通っていくのが一般的なのだろうけれど、僕は間違えて裏道のようなところを進んでしまった。進行方向に「ソープランド」という看板とネクタイ姿の中年男性の姿が目に入る。うわっ、まずい。視線をあわせないように、進む。すると、その男性が、「お兄さん、いい娘(コ)いますよ」と声をかけてきた。聞こえないふりして(あれだけ至近距離で言われて、気づかないわけがないのだけれど!)通り過ぎる。それにしても、「お兄さん、いい娘いますよ」って、人口に膾炙している台詞というか、もし小説を書くときにそういう台詞を使ったら、それだけで文学賞の候補から外されるような使い古された台詞だと思うのだけれど、いまだに使われているのね。んで、道後温泉。時間がなければ見学だけ、あるいは最終日の早朝に来ようかと思っていたけど、早く高松を出ることができたのでまだ十分時間がある。道後温泉本館にはいくつかコースがあって、単なる入浴なら400円で済む。けれど、せっかくなので、三階の個室に上がることにした。靴脱ぎの前の券売所でチケットを求める(1,500円)。Edyが使えるようになっててびっくり。思わず使ってしまった。「霊の湯三階個室」という黄色の入場券を受け取り、館内へ。急な階段を三階まで進むと、いくつかの個室がある。おばさんの案内で一番端の部屋へ。一人で個室を使われる方も結構いらっしゃるんですよ、とのこと。廊下を隔てたすぐ向かい側の部屋が「坊っちゃんの間」。そちらを見学したあと、おばさんが持ってきてくれた浴衣に着替える。タオル(この料金も1,500円に含まれている)を手に取り下へ降りる。1,500円のコースには、又新殿という、昭和天皇が入られたという湯殿の見学もセットになっていて、浴衣を着た状態で、案内してもらえる。係の方が熱心にしゃべってくださるので、こちらも何か訊かなくちゃ、と思っていくつか質問したものの、それがことごとくピント外れな質問だったらしく(さらに、この案内係のひとは、なんでも適当に流せない質のひとらしかった)、係の方のおでこには「?」マークが見えるようだった。ごめんなさい。ようやく風呂へ。案内されたのは霊の湯。7、8人も入ればいっぱいになりそう。ここに入れるのは、個室と二階席の料金を払ったひとだけなので空いている。しばらくは貸し切り状態だった。浴槽は深くて、中腰の姿勢で湯に浸かる(縁には座るところがある)。そうしているうちに、一人来て、また一人来た。けれど、混まないので、のんびりしているうちにすっかりのぼせてしまった。係のおばさんから、もうひとつのお風呂も行ってみたら、と言われていたのだけれど、からだが熱くて熱くて、やめておいた。再び狭い階段を上がり三階の個室へ。扇風機が備え付けられているので、その前に座って体を冷ます。部屋にはチャイムがあり、湯から戻ったらそれを押せ、と書いてある。チャイムを鳴らすと、おばさんが坊っちゃん団子と熱い日本茶をもってやってくる。坊っちゃん団子はうれしいけれど、熱い茶は飲みたくない。冷たいのありますか、と訊くと、烏龍茶ただし別料金、との答え。瓶入りの烏龍茶を持ってきてもらい、100円払う。ぐびぐび。一気に飲み干すとだいぶん体の熱が引いた。それにしても、ちょっとした健康ランドへ行ったって1,000円近くかかるのだから、道後温泉の個室1,500円というのは格安だ。入館から1時間20分以内、という制約はあるけれど、着替え→見学→入浴→休憩でそれだけあれば十分すぎるほど。扇風機で十分涼んでから、着替える。さすがにネクタイは勘弁、という感じだったのでしなかった。温泉本館を出て、商店街(「ハイカラ通り」というらしい)を歩く。お土産用の坊っちゃん団子を探す。夏目漱石の『坊っちゃん』に登場したのはここのだという、「つぼや」さんのを買うつもりが、残念ながら定休日。他にもいくつかの製造元があるらしい。道後温泉本館まで戻って、ここで出しているのはどこの団子ですか、と訊くと、「うつぼや」さんのだと言う。「つぼや」と「うつぼや」。冗談か。「うつぼや」の団子を買って道後温泉駅に戻る。再び電車に乗って大街道まで。夜、仕事をしなければならないのだけれど、気分が乗らないので、何かCDを買おう、と決める。ホテルのすぐそばの「ラフォーレ原宿松山(「ラフォーレ松山」ではなく)」にタワーレコードがあるとフロントで教えてもらい、出かけたものの、欲しいCDはなく。クラシックはほとんど扱っていないようだった。それから、明屋書店をのぞき、またホテルに戻る。夜は外で食べようかと思っていたけれど、資料に手を入れているうちに出かけるのが面倒になってしまい、ルームサービスで済ませる。オムライスとシーフードカレー、海鮮どんぶりのあいだで揺れに揺れ、シーフードカレーを頼む。松山まで来てカレーライス。


【支出編】
全日空ホテルクレメント高松  11,452円(クレジットカード)
・高松→松山 JR乗車券および自由席特急券  5,500円(クレジットカード)
・anan(宮脇書店駅前店) 350円
愛媛新聞  110円
松山市電1dayチケット  300円
・子規堂  50円
道後温泉入浴料  1,500円(Edy
・烏龍茶(道後温泉)  100円
・お土産(坊っちゃん団子など)  1,470円
サントリー烏龍茶(ローソン道後駅前店)  147円
三島由紀夫『鍵のかかる部屋』新潮文庫明屋書店大街道店)  580円
・本日のコーヒー(スターバックス・松山いよてつ会館ビル店)  310円(スターバックスカード)