サラダ

 なにがどうおかしいのかちゃんと言葉で説明できればいいのだけれど、それができないから困っている。昼休みのこと。用があってデパートへ。ついでに昼食を調達しに地下の食料品売り場へ行った。おこわ弁当もいいし、ちらし寿司もいい、鶏そぼろごはんも悪くない。アンデルセンのパンもおいしそうだとふらふらしているうちに、漬物屋の店先に出た。そのなかで目についたのが、「サラダ感覚で食べるお漬け物」というPOP。この、「サラダ」という言葉にやられてしまった。おかしくてしょうがない。サラダ。日常的に使っている言葉なのに、なんでこのおかしさに気づかなかったのだろう。サラダ。野菜をドレッシングで和えた料理(言うまでもなく)。もっと新鮮でしゃきっとした感じが伝わってくるような言葉ってなかったのかよ! サラダ。なんとなく発音がきたならしい。やっぱりサラダって変だよ。あらためて考えると。寿司は「すし」って感じが出ているのに(もう何を言ってるんだか自分でもわからなくなってきた)、サラダはどう見てもサラダというイメージじゃない。どうして誰もこのおかしさに気づいていないんだろう。それとも、見て見ぬふりをしているだけ? しばらくはサラダを見るとにやにやしてしまいそうで恐い。「あの客、サラダを見てにやにやしてるんですよ、シェフ」「なんだと。いくら客だからって許せねえ。見てろよガツンと言ってやる」。シェフがこちらにやってくる。「お客様、お気に召しませんか」「いや、サラダはおいしいんですがね、僕、最近ね、サラダのことをサラダっていうのがおかしくてしょうがないんですよ。いまも笑いがこみあげてきて・・・(笑)」。「うだうだ言ってねえで帰れ!」ということにならないとも限らない。